忘れもしないあの出来事。今日のような暑さの休日だった。
起きて目に入るのは、床に無造作に置かれた服やバッグ。
1週間前に掃除したとは思えない荒れ果てた部屋の惨状。
せっかくの休日であるが、片付けることにした。
先に散らかした服を洗濯機に放る。換気のために窓を開けた。網戸は閉めたまま、少しだけ温い風が入る。暑さで眉間に皺がよった。
今日やらないと着る服もなくなる。仕方ない。やるしかないのだ。
洗濯物ができるまでに荷物を片付け掃除機をかける。そうこうするうちに洗濯が完了した。
当時は外干し派だった私。洗濯物を干そうと網戸を開けた瞬間。
視界の端を、羽音とともにでかい何かが通り過ぎた。
悲鳴を上げて恐る恐る見ると、やつがいた。
黒ではない。茶色のミンミン鳴くやつだ。
いや、何で?どこから来たんだお前は。
こうして虫が苦手な私と、やつとの戦いが始まった。
一人暮らしの家に虫取り網なんてあるわけない。
あるのは害虫駆除のスプレーと火ばさみ、そして己の身のみ。
いざ、勝負。
スプレー噴射。火ばさみで誘導。結果、外に出せたのか倒したのか。そこは曖昧だ。
ただ、黒いやつと同じように、スプレーを使えば飛び回られた。その度に近所迷惑な悲鳴を上げていたことだけは確かだ。
そして、アパートの階段には毎日のごとく腹を見せたやつがいた。
階段のど真ん中に陣取るのはやめてほしい。
必死に避けた瞬間、やつはその場で羽をばたつかせ、羽音を響かせる。最期の足掻きをする。
セミファイナル。これが噂の…と、一周回って感慨深い気持ちになった。
あれだけ戦ったやつとは別の個体だろう。短い命、必死に生きたのだ。
ただ、遅刻するから場所は考えてくれ。

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