私はとある人から言われた言葉をずっと覚えている。
「お前に良いところなんてない。」
頭の中で反響が止まない。
もうずいぶん前のことだ。
友人と話していたとき、友人が「あなたにもいっぱい良いところがあるよ!」と褒めてくれた。
ただ、その会話を聞いていたとある人が「そいつに良いところなんてない。」と横やりを入れたのだ。
その人や友人の表情も顔も、その後どうしたのかも、正直覚えていない。
ただ、私の中でどこか心が壊れたことだけは覚えている。
そして、それは今も私の心に傷として残り、いろんな意味で今の私を作りあげた。
私の思考に枕詞のように付きまとうのだ。
「良いところがないから、頑張らないといけない。」
「良いところなんてないからできないんだ。」
あの時の苦しみ、悔しさ、悲しさ、怒り、憎しみ。
あの時の感情がこの言葉を聞くだけで今でも一瞬で思い出せる。忌々しい記憶だ。
でも、一番悔しいのが、今でもこの言葉や感情を鮮明に思い出せる自分自身だ。
あれからたくさん経験をした。できることも増えた。
自分の長所も強いていうなら責任感があるところ、と絞り出せるようになった。
それなのに、心の傷として残り続けているのが悲しい。
それでも、私はこの傷を無駄にはしたくない。
あの言葉を受けたからこそ、私は言葉の怖さを知った。
だから、自分は誰かに同じ傷をつける人にはなりたくない。
この経験と傷を無駄にしたくない。決して辛いだけの記憶にはしない。
この経験をしたからこそ、自分の言葉が誰かを傷つけないか、言葉の選び方を意識するようになった。
また「良いところなんてない」と言われるかもしれない。
でも、関係ない。私の良さは私が知っていればいい。
今の自分なら。「へぇ、だから?」なんて、頭を支配する敵影に不敵に笑ってみせるのだ。

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