ある劣等者の空想

「落ちこぼれ」なんて聞こえた。拾ってしまった音。

でも、悲しくはなかった。だって、そんなの誰より自分が知っていたから。

悲しいと思わない自分が、虚しかった。

落ちこぼれ。

そう言って、まだ何者でもなかった私に指をさしたのは、皮肉にも大人だった気がする。

自分なりの精いっぱいで、悩みながらも答えを出した。学ぼうとした。

そしたら、聞こえてないと思って、後ろ指さすように呟くのだ。

導いてほしかったのに。そんな希望は幻想だった。

代わりに貼られたのは、劣等者だというレッテル。

表面上は励まして、離れた途端に嘲笑う。

傷ついたのではなかった。認めてしまっただけだ。

でも、あの音を拾った瞬間は、今でも忘れることはない。

ふと、考える。

光の入りにくい部屋で、本を読んでいる子どもがいる。月の光だけを頼りに、本を読んでいる。

こんな暗い部屋のわずかな光で、その本は読めているのだろうか。

照明器具はなさそうだ。ならば、蝋燭を使った灯りはどうだろうか。

なぜか持っていた燭台を差しだした。

顔を上げたその子の頬には、一筋の雫が伝っていた。

私に、よく似ていた。いつの時代の私だろうか。ずっと、涙を流していたのだろうか。

灯りを差しだしても、また泣きながら本に目を落とすその子ども。

何の本を読んでいるのか、私には見えない。

それでも必死に、何かを探すように、学ぶように。視界もにじみ、見えにくいこの部屋で。

灯りをともしたのは、意味があっただろうか。

この子を抱きしめるべきだろうか。止めるべきだろうか。

でも、私には止めるすべはない。

この子はきっと自分で涙を拭い、自分なりの答えを探して、もがいているように見えたから。

だから、もう少しだけ、傍で見守ろうと思う。視界のにじみや部屋の暗さに気づくまで。

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